撮影で覚えておきたい重要な設定はざっくり3つありますが、それらは絞りとISO感度、そして今回紹介するシャッタースピードです。
動画撮影する時、シャッタースピードはどう設定するのが正解でしょうか。
フレームレートと同じ数値にするべき?
明るすぎるからシャッタースピードを速くして映像を暗くしてもいい?
これらの疑問に答えるためにシャッタースピード、そしてシャッターアングルについて解説します。
シャッタースピードとは
シャッタースピードとは、カメラセンサーの前にあるシャッターが開いている時間のことです。
シャッターが開いている時間だけレンズを通して光をセンサーに取り込みます。
1/50とか1/1000とか表示されますがこれは秒のことで、1/1000なら1÷1000で0.001秒となります。
カメラの撮影ボタンのことをシャッターっていいますよね、それはシャッターの開閉を行うボタンだからです。
シャッタースピードの役割
シャッタースピードには2つの役割があります。
- 映像の明るさを変える
- モーションブラーの度合いを調整する
シャッタースピードを遅くすれば遅くするほどシャッターが開いている時間が長くなり、光がたくさんセンサーに取り込まれて映像が明るくなります。
逆にシャッタースピードを速くすると、すぐにシャッターが閉じて光の取り込み量が減るため、映像は暗くなります。
映像の明るさを変えるにはISO感度、絞り、シャッタースピードの3つを操作しますが、シャッタースピードが持つ最も重要な要素は明るさよりもモーションブラーにあります。
左から右にいくにつれてどんどんシャッタースピードを遅くして風車を撮影しています。
1/1000ではほぼ静止画のように撮れていますが、1/250あたりから先端のブレ具合が目立ち、1/5ではもはや円盤のように見えます。
モーションブラーの度合いが変わることで、被写体の見え方が大きく異なり結果として映像に強いインパクトを与えます。
スローシャッター
シャッタースピードを遅くして撮影することをスローシャッターやロングエクスポージャーと言います。
シャッタースピードを遅くした時の懸念点は撮影時のブレです。
手持ちで撮影していると手のブレがダイレクトに伝わりますから、一見問題なさそうな写真に見えても拡大してみるとブレブレで残念な気持ちになることがあります。
物撮りで写真を撮るなら最低でも1/100はあると気を付ければブレはあまり気になりません。
逆にスローシャッターを活かすと、水の流れを線のように見せるキレイな写真が撮れます。
また、ライトを持って動かすとスローシャッターなら光の軌跡を写真におさめることが可能です。
シャッタースピードを遅くすればするほど取り込む光の量が増えるため、絞りやISO感度を調整しなければなりません。
極端に絞りを落とすと収差や解像度の低下といった副作用が出たり、ISO感度は一定以下には下げられなかったりと制約があるため、特に日中の撮影ではレンズ前につけて光量を落とすNDフィルターが必要になるかもしれません。
ファストシャッター
スローシャッターの対義語としてこんなのがあるかあんまり聞いたことないのでよく分かりませんが、アイディアは分かるかと思います。
被写体の動きが速ければ速いほどシャッタースピードを速くしないとブレが強くなります。
こういった動きの速いものをハッキリ捉えたいならシャッタースピードは速くしなければなりません。
もちろんブレをあえて捉えて躍動感を出すという方法もあるので、被写体が速ければシャッタースピードも速くしなきゃダメっていう話じゃないです。
シャッタースピードを速めすぎず、風景を流すことによって車のスピード感を演出している写真です。
また、シャッタースピードを速めると人の目ではなかなか追いきれないような事象も写真におさめることができるので、印象的な映像に仕上がることも。
自分の撮ってみたい映像を思い描ければいいのですが、最初は色々設定を変えて遊んでみるのがおすすめ。
その分映像が暗くなるので、絞りを開けたりISO感度を上げたり、照明を強めたりといった設定調整が必要になります。
映像での影響
静止画での説明が多くなってしまいましたが、動画でもシャッタースピードはモーションブラーの度合いを調整します。
1/5といったかなり遅いシャッタースピードで動画を撮ると、非常にブレブレで一見スローモーションともコマ撮りとも思えるような映像になります。
スローシャッターの映画の例が思いつかなかったのですが、アブリルラヴィーンのアルバムでそんなんあったなぁとか思いながら。これは本人を画面中央で静止させて、スローシャッターで撮影することで周りの人間をブレブレにしてますね。映画でもこういうシーンたまにあるけど思いつかない。
ファストシャッターだと「マッドマックス 怒りのデス・ロード」ではほとんどのシーンでシャッタースピードを速めていて、ゴリゴリのスピード感とキレのある映像に仕上げています。
シャッターアングルとは
昔のフィルムカメラは毎秒24枚のフレームを収めるために都合が良かった回転式シャッターを利用しており、シャッターが開く角度によって感光時間を決めていました。
その角度のことをシャッターアングルと言います。
現在のカメラは当然このような回転式は採用されていませんが、フレームレートに対するシャッタースピードを表すのに分かりやすい指標となっています。
正直こんなの覚えなくてもほぼ出てこないような知識ですが、最適なシャッタースピードはいくつか?という問いかけに少し絡んでくるので。
角度と露光時間
シャッターの開く角度は円周なので最大360度です。
ピンク色が感光時間だとすると、シャッターアングルが狭くなればなるほど光にさらされる時間が短くなっていきます。
360度開くとフレームレートと同じスピードになりますので、360°を100%として計算できます。
180度だと半分の50%ですし、90度だと25%です。
例えばフレームレートが30fpsだった場合、シャッターアングルが360度だとシャッタースピードは1/30と同じで、これが180度だと1/60、90度だと1/125となります。
これが1/120にならないのはそういう設定がないため、近似値を利用します。
どんな効果があるか
シャッターはアングルが小さくなれば小さくなるほど、つまりシャッタースピードで言うと速くなれば速くなるほど光が入ってこなくなって映像が暗くなります。
さらにモーションブラーが減って一コマあたりの見た目がパキッとします。
この辺はすでにもうシャッタースピードの部分で解説しましたが、要するにシャッターアングルの度は小さければ小さいほど露光時間が減るということです。
180度シャッターの法則
最も人の目に近い自然なモーションブラーを生み出せるシャッタースピードはフレームレートの2倍と言われており、これはシャッターアングルで言うところの180度となります。
なので The 180 degree shutter rule、180度シャッターの法則と言われます。
ここまで色々説明してきましたが、小難しく考えずとりあえずフレームレートの2倍のシャッタースピードにしておけば良いです。
でもこのルールは絶対じゃなくて、自分で表現したい映像があるならシャッタースピードを変えて撮影するのは当然アリです。
明るさのみを変更するためにシャッタースピードを変えるのではなく、モーションブラーの調整を行うために変える、と考えましょう。
さいごに
絞りやISO感度によって明るさや被写界深度を調整できますが、シャッタースピードではモーションブラーを調整することができます。
とりあえず最初は180度、つまり撮影フレームレートの2倍で良いですが、慣れてきたらシャッタースピードを変えるとどんな映像表現ができるのか自分でも模索してみることをおすすめします。