ドラマや映画、コマーシャルなどプロの現場でよく見かけるアイツ。レンズにバコっとついた大きめのアクセサリーをマットボックスといいます。
あれはつけてるとプロっぽい機材に見えますが、当然それだけが理由ではなく多くの利点があります。
一体マットボックスをつけると何が良いわけ?ということを今日は覚えていってください!
マットボックスとは
マッドボックスはレンズへの光の入り方を調整するためのカメラアクセサリー。
トップまたは左右にバンドアやシェードなどと呼ばれる黒い板が付属したレンズフードのこと。シェードは大体の場合取り外し可能になっており、必要なければ外すことができます。
レンズ前にはフィルターをはめて差し込めるフィルターフレームが1〜3枚ほど入っています。ここに四角や円形フィルター(別売り)をマウントさせて取り付けます。
レンズにはめる部分はアダプターリングと呼ばれ、何種類かのφが用意されていることが多いです。これを使用するレンズの口径に合わせないとはまりません。このアダプターリングさえ対応すればどんなレンズにもつけられるということです。フィッシュアイレンズなどは例外ですが。
マットボックスの役割
ここからは役割について解説していきます。
入光をコントロールする
まず1つめの大きな役割が入光をコントロールすること。レンズについてくることが多い一般的なフードと同じようなもので、上下左右から余計な光がレンズ内に入らないように物理的に遮ります。
シェードはそのフードを拡張するように伸びていて、太陽光や強めの逆目ライトを遮るのに役立ちます。全方向からライトが満遍なく当たるとは考えにくいですから、一方向からのライトをうまく遮れれば大体の場合問題ないです。
ちなみにマットボックス自体は回転できますから、マットボックスを縦にして右からのライトを切る…といった使い方が可能です。
上記は太陽光がギリギリレンズの外から入ってきてフレアを引き起こしているのを懐中電灯で再現したものです。この表現を味とも捉えられますが、室内でライトが対角線にあるときも同じような現象になるため、例えば静謐な会話のシーンではとても邪魔です。不必要な場合はシェードを調整して切る必要があります。
トップシェードで切りきれない場合、フードの内側にバコンとはめるマットを使うか、もしくは黒フラッグをスタンドで立てて切ることになるでしょう。
稀にレンズとフィルターの隙間が離れているがゆえにゴーストといって滲んでダブったような映像が現れてしまうことがあります。その場合でもフィルターの角度をズラしたり、マットボックス自体を少しななめに取り付けることで回避できます。
その他にもフレアなど光によるレンズへの影響は多くありますが、レンズに直接取り付けるタイプのフィルターだとこういった問題に対処するのが難しいんですよね。マットボックスはそういった対策として非常に有効なアクセサリーです。
フィルターを取り付けられる
現場ではフィルターを都度入れ替える作業が発生します。また、フィルターも1枚ではなく少なくとも2枚は使うことが多々あります。例えばブラックプロミストとNDとかね。
カメラによっては内蔵NDに限りがあるため、外での撮影はNDフィルターを別途装着して使うことが多いと思います。しかしこれがレンズに直接はめるタイプだと1枚以上フィルターが取り付けられませんよね。
そんな時はマットボックスを使うとフィルターの重ねづけができるわけです。上記はTIFFENの4×4.65インチのフィルターですが、それを以下のようなフィルターフレームにはめてマットボックスに差し込みます。
さらに、レンズの口径が違ってもマットボックスのリングアダプターを取り替えれば関係ないので、四角フィルターを使えば汎用性が抜群に高まります。フィルターって馬鹿にならない値段なので、レンズの口径ごとに揃えていたら大変なことになりますし、交換も面倒。
レンズの保護もしてくれる
レンズの表面は特殊なコーティングがしてあるため、傷にはめっぽう弱いです。なので拭き掃除も基本的にはせずにブロワーでホコリを飛ばすだけです。それくらい繊細です。
マットボックスをつけてフィルターをはめていると、前から何か飛んできたとしてもレンズ自体を守れる可能性が高まります。
さらに必要ない時はトップシェードを折りたたんでレンズ前を保護するように閉じられるため、安全対策としては優秀です。
やってる感は確かにある
マットボックスのあるなしでは見た目に大きな違いがあり、率直に言ってついてた方がかっこいい。やってる感がある。リグに載っててもマットボックスないとアンバランスな感じしますしね。
ただなんでマットボックス使うんですか?って後輩ちゃんに聞かれた時になんとなくかっこいいからと答えるのはあまりにもダサいので、ちゃんとロジックも教えられるようになっておきましょう。
マットボックスの注意点
逆にマットボックスをつけることによって起きる弊害や懸念点について紹介します。
ゴツくなる
マットボックスぶん大きくなります。例えば2カメで撮影していて、非常にギリギリの画角で勝負しているとお互いにマットボックスがチラリと見えてしまうという可能性があります。
というか日本は家屋が狭いため、頻繁に発生しがちです。ライトを作っているとフレア問題との戦いもあるため、マットボックスを外して撮るというのは選択肢として難しい時が多いです。その場合は素直に2台目の撮りをやめさせるのが良いです。
マットボックスは重さも当然ながらそれなりにあるなめ、コンパクトな撮影スタイルに拘る場合はあえてマットボックスを使わないという選択肢も良いでしょう。
落ち止め対策が必要
マットボックスのフィルターは底が止まっていないことが多く、ネジを締め忘れたりするとフィルターがすっぽり抜けて落下・破損することがあります。パーマセルテープなどで対策してあげましょう。
また、マットボックス自体も落下する危険性があるため、カラビナと紐などでリグに繋いで落ちても大丈夫なような保険をかけておくのが重要です。
マットボックスが落ちてもおいそれと壊れるとは思えませんが、中に入っているフィルターは粉々にるなるでしょうからね…。
こんなマットボックスがある
レンズの口径や使用するカメラによって選択するマットボックスは異なります。
例えばAMIRAやVENICE、REDといった大型のカメラと併せて口径の大きなレンズを使う場合はARRIのマットボックスが良いですが、ミラーレスならSmallRigやTILTAなどが良さそうです。
購入時に注意するのはリングアダプターと自分のレンズの口径が合っているかどうか、持っているフィルターのサイズと合うかなどの確認です。
ここではミラーレス用のものをいくつかピックアップして紹介。
カーボンファイバー素材なので軽量。トップシェードありで、4×4と4×5.65のフィルターが合計2枚入ります。
リングアダプターは67/72/77/82/114mmに対応しています。95mmからの変換アダプターは別売りです。
TILTAのマットボックス。先に紹介したSmallRigのものよりもさらに軽量です。
フィルターが95mmの円形仕様で、別売りの四角フィルターフレームを購入すれば四角ファルターも使えるそうです。ただしフレームは1枚のため2枚重ねたい人には使えません。
マットボックスの解説まとめ
プロの現場でよく見かけるあのマットボックスとやら、あれ一体どんな役割なんだろう?という疑問に答えられていたら幸いです。
- 入光をコントロール
- フィルターの付け替え
- レンズの保護
- 見た目的にいいぞ
というのがマットボックスを使う主な理由です。
若干重さが足されるのと、四角型のフィルターは高価なものが多いため、そこでも出費が嵩むことを念頭に置いてマットボックスの購入を考えましょう。
フィルターは円形を流用、コンパクトなロケだから1枚NDを使うだけのつもりでTILTAのような軽量マットボックスを買うのは大いにありです。