映像ノイズ。
そいつはアメーバのようにうじゃうじゃと入り込む我々の憎き天敵。
ネイティブISOについて知らないまま撮影していると実はノイズが多く混入してしまっているかもしれません。
でも最もノイズが少ないISOって設定できる一番小さい数字なんでしょ?と思いがちですが、カメラによっては2段構えで高感度ネイティブISOが用意されていることも。
この場合、中途半端にISOを上げるよりも一気に高くした方が圧倒的にノイズが少ないという結果になります。
早速見ていきましょう。
ネイティブISOとは
ネイティブISOとは最適な感度設定とされるISO値のこと。つまり、センサーが最も良いパフォーマンスを発揮し、最も正確な色再現や最小限のノイズレベルで撮影できるISO値のことを指します。
カメラメーカーは各カメラのセンサーの性能に基づいてネイティブISOを設定していますが、私が使用しているa7IVを例にとりますと、選択するピクチャープロファイル(PP)によってネイティブISOは変動します。
なので、自分が使用しているPPに合わせてきちんと数値を覚えていく必要があります。
ネイティブISOよりも低い・高いISO値は拡張ISOと呼ばれます。明るさの調整に便利な一方、ダイナミックレンジが狭まったりノイズが多く現れたりといったデメリットがあります。
デュアルネイティブISOとは
カメラによっては低感度用・高感度用と2つの異なる感度設定が搭載されており、これをデュアルネイティブISOまたはデュアルベースISOと呼びます。
基本的にネイティブISOは低いため、暗い部屋中で撮影する場合明るさが足りなくなってしまうことが多く、シャッタースピードや絞りでは救済が難しい可能性があります。
その際はISOを段階的に上げていくわけですが、ISOは光を電気的に増幅させるので上げれば上げるほどノイズが増えていきます。
高感度用のネイティブISOも搭載しているカメラだと、ISOを上げていく途中でいきなりノイズが減る瞬間が現れます。これが2つめのネイティブISOとなり、少ないノイズで撮影できる設定です。中途半端にISOを上げるよりも一気に高感度ネイティブISOまで上げた方がかえってノイズが減るという結果になります。
a7IVのネイティブISO
a7IVでのネイティブISOは以下の通りです。これはカメラによって異なるので、自分のカメラでググってみると良いでしょう。
PP | 低感度 | 高感度 |
---|---|---|
なし (PP0) | 100 | 400 |
s-log3 (PP8) | 800 | 3200 |
s-cinetone (PP11) | 125 | 500 |
法則として、選択できる最も低い値のISOが低感度ネイティブISOで、それを4倍すると高感度ネイティブISOになります。
ちなみにデュアルネイティブISOに関してSONYは公式に表明していないため、非公式だけど検証した結果絶対そうだよねっていう話になってます。
s-log3のノイズ
s-log3を例にとってノイズがどのように変化していくのか見てみます。
レンズにキャップを取り付けてブラックにし、レンズをF1.8の開放にしてシャッタースピードを最大限遅くしました。それでもまだ見えにくいため、FCPXで無理やり輝度を50%ほどあげ、シャープネスを追加してノイズを可視化します。加えてかなり拡大してます。
ノイズの見た目
まずこれが低感度ネイティブISOである800と、高感度に切り替わる直前の拡張ISOである2500を比較してみました。写真は圧縮される関係上見た目では分かりにくいんですが、2500の方がノイズがかなりのっています。
はい?
高感度ネイティブISOである3200とその直前の2500の比較です。いきなりノイズレベルが減っています。
低感度ISOと高感度ISOの比較。ほとんどノイズレベルは変わりません。
これがデュアルネイティブISOだ!
うん。
ノイズをWFMで確認
いややっぱり見た目じゃよく分からないな…という意見もあるかもしれませんので、ノイズレベルをWFMで確認してみます。
横長の棒線が黒レベル+ノイズですので、ノイズが増えると線が太くなっていきます。
ISO800と2500を比較しています。2500の方が線が太くなりノイズが増えていることを示しています。
ISO2500と3200の比較です。いきなり線が細くなってレベルが下がりました。
ISO800と3200を比較しています。ほぼ同程度だと思って良いです。
800から5つ上げている2500よりも、3200から2つ上げている5000の方が圧倒的にノイズが少ないです。
ネイティブISOより下げると…
s-log3などは800以下も選択可能ですが、上下にラインが引いてある拡張ISO扱いです。ISOを下げればダイナミックレンジも狭まっていきますが、それと同時にノイズレベルも下がります。
最低ISOの200と800の比較です。かなりノイズが細くなっていますね。その代わり数ストップ分のダイナミックレンジを失っています。
多少の情報を失ってもs-log3はそもそもダイナミックレンジが広く、出来上がりが酷いものになるか?というとそんなことはないため、例えば外でNDフィルター忘れたアチャーな場合は下げても全然いいと思います。
室内撮影に関していうと、ISO200が使えるほど明かりをバンバン炊くようなパターンはあんまりないと思うので素直にネイティブISOを選んで後処理で輝度を引き下げるのが良いかと思います。
高感度ISOを活用すればノイズは減る
結局どういうことか。
例えばs-log3で撮影している場合、ISO800じゃ足りないなと思ったら一気に3200まで上げるのが正解です。中途半端に2000とか2500にするとノイズがひどいことになります。
ISOを3200まで上げて、シャッタースピードや絞りで調整しましょう。また多少ハイライト側に転んでいるくらいなら後処理で輝度を落とせば適正値にもっていけます。
もしPPなしやs-cinetoneで撮影する場合はそもそも高感度でも400や500なので、ある程度ノイズは覚悟しながら適正値になるようにISOを上げましょう。それでもs-log3よりはそもそものノイズレベルが少ないかと思います。
というわけで今回はデュアルネイティブISOについてでした。